不動産を売却しようと思ったとき、「何から始めればいいのかわからない」と感じる方は少なくありません。実際、私たちのもとにも「売却の流れがよくわからなくて不安」という声が数多く寄せられます。
不動産売却は一般的に6〜7つのステップを経て完了し、期間としては5〜6ヶ月程度かかるのが目安です。決して短い道のりではありませんが、全体像を事前に把握しておけば、余計な不安を抱えることなくスムーズに進められます。
この記事では、売却前の準備から査定依頼、媒介契約、売却活動、売買契約、そして決済・引き渡し、さらには確定申告まで、不動産売却の流れを順を追って詳しく解説していきます。
初めて不動産を売却する方でも迷わず進められるよう、各ステップで押さえておくべきポイントを具体的にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
不動産売却の全体像をつかむ
不動産売却は、大きく分けて以下のステップで進んでいきます。
- 売却前の準備(目的整理・相場調査・資金計画)
- 査定依頼と不動産会社の選定
- 媒介契約の締結
- 売却活動・内覧対応
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
- 確定申告(該当する場合)
全体の流れを把握しておくことで、「今どの段階にいるのか」「次に何をすべきか」が明確になります。これは精神的な安心感にもつながりますし、各ステップで必要な書類や準備を前もって進められるというメリットもあります。
売却期間の目安は5〜6ヶ月ですが、物件の立地や市場状況によって前後することもあります。私たちがお伝えしたいのは、焦らず計画的に進めることの大切さです。
急いで売却しようとすると、相場より安い価格で手放すことになりかねません。まずは全体像をしっかりつかんでから、一歩ずつ進めていきましょう。
売却前の準備:目的整理と相場チェック
売却活動を始める前に、しっかりとした準備を行うことが成功への第一歩です。ここでは、売却前に確認しておくべき3つのポイントを解説します。
1. 売却の目的とスケジュールを整理する
最初に取り組むべきは、「なぜ売却するのか」という目的の明確化です。住み替え、相続、資産整理、離婚など、売却の理由はさまざまですが、目的によって売却のスケジュールや価格設定の優先順位が変わってきます。
例えば、住み替えで新居の購入資金に充てたい場合は、売却時期と購入時期の調整が重要になります。一方、相続した物件を早めに現金化したい場合は、スピード重視で進めることもあるでしょう。
「いつまでに売りたいのか」「最低いくらで売りたいのか」という2点を最初に整理しておくことで、その後の判断基準が明確になります。
2. 周辺相場を調べて大まかな売却価格を把握する
目的が整理できたら、次は周辺相場の調査です。不動産会社に査定を依頼する前に、自分でもある程度の相場観を持っておくことをおすすめします。
相場を調べる方法としては、以下のようなものがあります。
- 不動産ポータルサイトで類似物件の売り出し価格をチェックする
- 国土交通省の「土地総合情報システム」で実際の取引価格を確認する
- 近隣で最近売却された物件の情報を集める
相場を把握しておくことで、不動産会社から提示された査定価格が適正かどうかを判断しやすくなります。
3. ローン残高・税金・諸費用の見込みを確認する
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。売却に伴う諸費用を事前に把握しておくことが重要です。
確認すべき主な項目は以下の通りです。
- 住宅ローン残高:売却代金でローンを完済できるか確認
- 仲介手数料:売却価格の3%+6万円(税別)が上限
- 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙代
- 譲渡所得税:売却益が出た場合に課税される可能性あり
- その他費用:抵当権抹消費用、引っ越し費用など
これらを事前に計算しておくことで、売却後の資金計画を立てやすくなります。
査定依頼から媒介契約までの流れ
準備が整ったら、いよいよ不動産会社への査定依頼と媒介契約の締結に進みます。この段階での判断が、売却の成否を大きく左右します。
不動産会社を選ぶときの基本ポイント
不動産会社選びは、売却成功のカギを握る重要なステップです。私たちがお伝えしたい選び方のポイントは以下の通りです。
- 売却実績:該当エリアでの売却実績が豊富かどうか
- 担当者の対応:質問に対して誠実に答えてくれるか
- 販売戦略の提案力:具体的な売却プランを提示してくれるか
- 査定価格の根拠:なぜその価格になるのか説明できるか
複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討することをおすすめします。査定価格だけでなく、担当者との相性や会社の姿勢も重要な判断材料です。
査定の種類(机上査定・訪問査定)の違い
不動産査定には、大きく分けて「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。
- 机上査定(簡易査定)は、物件情報や周辺の取引事例をもとに、実際に物件を見ずに算出する方法です。スピーディーに概算価格を知りたい場合に適しています。
- 訪問査定(詳細査定)は、担当者が実際に物件を訪問し、建物の状態や周辺環境を確認した上で価格を算出します。より正確な査定価格を知りたい場合は、訪問査定が必要です。
本格的に売却を検討するなら、訪問査定を受けることをおすすめします。机上査定と訪問査定で価格差が生じることも珍しくありません。
媒介契約の種類と選び方
不動産会社を選定したら、媒介契約を締結します。媒介契約には主に3つの種類があります。
| 契約の種類 | 複数社との契約 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 5日以内 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介 | 不可 | 可能 | 7日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | 可能 | 可能 | 義務なし | 義務なし |
専属専任媒介や専任媒介は、1社に任せる分、積極的な販売活動が期待できます。一方、一般媒介は複数社に依頼できる自由度がありますが、各社の取り組み姿勢が分散する可能性もあります。物件の特性や売却の急ぎ度合いに応じて選びましょう。
売却活動と内覧対応の進め方
媒介契約を締結したら、いよいよ本格的な売却活動がスタートします。広告掲載から内覧対応、そして価格交渉まで、この段階での対応が売却価格を左右します。
広告・集客の方法と売り出し価格の考え方
不動産会社は、以下のような方法で購入希望者を集めます。
- 不動産ポータルサイトへの掲載
- 自社ホームページでの告知
- チラシ・折り込み広告の配布
- レインズ(不動産流通機構)への登録
- 店頭での紹介
売り出し価格の設定は、売主の希望価格と査定価格、そして市場動向を踏まえて決定します。高すぎると問い合わせが来ず、安すぎると損をしてしまいます。不動産会社の担当者と相談しながら、適正な価格を設定することが重要です。
最初は少し高めに設定し、反応を見ながら調整するという戦略もあります。ただし、長期間売れ残ると「売れない物件」というイメージがつくリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
内覧前の準備と当日の対応のコツ
購入希望者からの内覧希望があったら、良い印象を持ってもらえるよう準備しましょう。
内覧前の準備
- 室内の整理整頓・清掃を徹底する
- 水回り(キッチン・浴室・トイレ)は特に念入りに
- 換気をして室内の空気を入れ替える
- カーテンを開けて明るい印象にする
内覧当日の対応
- 質問には正直に答える(隠し事はNG)
- 物件の良い点をさりげなくアピール
- 売主がいすぎると逆効果の場合も(担当者に任せるのも手)
第一印象が購入判断に大きく影響します。「住みたい」と思ってもらえるような空間づくりを心がけましょう。
価格交渉が入ったときの考え方
購入希望者から価格交渉が入ることは珍しくありません。交渉に応じるかどうかは、以下の点を考慮して判断します。
- 売り出しからどのくらい時間が経っているか
- 他に購入希望者がいるか
- 提示された金額が許容範囲内か
- 売却のスケジュールに余裕があるか
交渉に応じる場合も、すぐに相手の言い値を受け入れるのではなく、こちらからも条件を提示することが大切です。不動産会社の担当者と相談しながら、納得のいく条件で合意できるよう進めましょう。
売買契約当日の流れと注意点
購入希望者との条件交渉がまとまったら、売買契約の締結に進みます。契約当日は重要な手続きが行われるため、事前にしっかり理解しておきましょう。
契約書の確認ポイントと重要事項説明
売買契約当日は、まず宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。これは法律で義務付けられている手続きで、物件に関する重要な情報が説明されます。
重要事項説明で確認すべき主な内容
- 物件の所在地・面積・権利関係
- 法令上の制限(用途地域・建ぺい率など)
- インフラの整備状況(上下水道・ガスなど)
- 契約解除に関する事項
- 瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する事項
重要事項説明の後、売買契約書の内容を確認し、売主・買主双方が署名・捺印します。契約書の内容に不明点があれば、この場で必ず確認してください。契約後に「知らなかった」では済まされません。
手付金・手数料などお金の動き
売買契約締結時には、一般的に買主から売主へ手付金が支払われます。手付金の相場は売却価格の5〜10%程度です。
手付金には「証約手付」「解約手付」「違約手付」などの性質がありますが、不動産売買では解約手付として扱われることが多いです。
つまり、買主は手付金を放棄すれば契約を解除でき、売主は手付金の倍額を返還すれば解除できるということになります。
また、この段階で不動産会社への仲介手数料の一部(通常は半額)を支払うケースもあります。契約前に支払いのタイミングを確認しておきましょう。
決済・引き渡し・確定申告までの流れ
売買契約が完了したら、最後のステップである決済・引き渡しへと進みます。そして売却が完了した後は、確定申告が必要になる場合があります。
決済当日の具体的な手続き
決済は、売買契約書に記載された引き渡し日に行われます。場所は通常、買主が住宅ローンを借り入れる金融機関や、不動産会社の事務所、司法書士事務所などで行われます。
決済当日の流れ
- 司法書士による本人確認・取引意思確認
- 登記関連書類への署名・捺印
- 買主の住宅ローン融資実行
- 売主への残代金支払い
- 各種精算(固定資産税・管理費など)
- 仲介手数料残額の支払い
決済には通常2〜3時間程度かかります。必要書類(権利証・印鑑証明書・本人確認書類など)を忘れずに持参しましょう。
鍵の引き渡しと引き渡し後にやること
残代金の受け取りと同時に、物件の鍵を買主に引き渡します。鍵だけでなく、以下のような関係書類も一緒に渡すのが一般的です。
- 建物の設備取扱説明書
- 保証書類
- マンションの場合は管理規約など
引き渡し後は、住所変更の届出や郵便物の転送手続きなど、各種手続きを速やかに行いましょう。また、引き渡し後に買主から設備の不具合などについて連絡が来る可能性もあるため、連絡が取れる状態にしておくことをおすすめします。
譲渡所得の計算と確定申告の基本
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、確定申告が必要です。譲渡所得は以下の計算式で算出します。
- 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費には購入時の価格や仲介手数料などが含まれ、譲渡費用には売却時の仲介手数料や印紙税などが含まれます。
マイホームを売却した場合は「3,000万円特別控除」という特例が適用できる可能性があります。これは譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、多くの場合、税金がかからないか軽減されます。
確定申告の時期は、売却した翌年の2月16日から3月15日までです。特例の適用を受けるためには、譲渡所得がゼロまたはマイナスでも申告が必要な場合があるため、注意が必要です。
まとめ:不動産売却をスムーズに進めるために
不動産売却は、準備から確定申告まで多くのステップがあり、5〜6ヶ月という長い期間を要する取引です。しかし、全体の流れを事前に把握し、各ステップで適切な判断を重ねていけば、後悔のない売却を実現できます。
私たちがお伝えしたいポイントを改めて整理すると、以下の通りです。
- 売却の目的を明確にする:目的によって優先すべきことが変わる
- 相場と諸費用を事前に把握する:売却後の資金計画に直結する
- 信頼できる不動産会社を選ぶ:売却成功のカギを握る重要な判断
- 内覧対応は第一印象が勝負:「住みたい」と思わせる準備を
- 契約書は細部まで確認する:後から「知らなかった」は通用しない
- 確定申告を忘れずに:特例適用のためにも申告が必要な場合あり
不動産売却は人生でそう何度も経験することではありません。だからこそ、わからないことがあれば遠慮なく不動産会社の担当者や専門家に相談してください。一人で抱え込まず、信頼できるパートナーと連携しながら、最良の取引を目指していきましょう。
